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肆 秘されし記憶に黄金の鍵 + 18 +

ผู้เขียน: ささゆき細雪
last update ปรับปรุงล่าสุด: 2025-05-20 06:26:24

 きぃ、と寝台の軋む音とともに、朱華の身体が押し倒される。

 夕暮れ時の湖に、淡い紅色の雲がたゆたうのを見届けてから、ふたりは朱華の室へ戻った。

 そして、はじめのうちはぎこちなく唇を寄せ合い、互いを味わうようにゆっくりと触れ合わせていく。

 口唇だけでなく、舌を絡ませあう口づけも加わり、なまめかしい音とともに唾液が銀の糸になって流れていく。

「あ……ふっ」

「お前のくちびるは、甘いな」

 夜澄の舌先が朱華の歯列をなぞり、吐息を漏らす彼女に官能を刻んでいく。

 彼の手は衣の上から小ぶりな乳房を掬い上げ、揉み上げている。

 小鳥が囀るように嬌声をあげる朱華の前で、夜澄は甘くてくすぐったい、恋する神々の悦びが謡われた神謡を口にしていた。

「Anramashu retar imeru arkishiri――美しき白い稲光よ、帰っておいで」

 そうして優しい声で、夜澄は神謡を口ずさみながら、朱華の着衣を脱がせていく。

 もうすぐ二十歳になるというのに質素な暮らしをしていたからか華奢な、触れれば壊れてしまいそうな身体だが、白い桜の花を彷彿させる生まれたままの姿は妖艶で、夜澄を欲情させるのに十分だった。

 懐かしくて安心できる詠唱を紡ぎながら、ふたりはすべてをさらけ出す。

 けれど、明るい場所で目にした朱華の裸体に刻まれた口づけの痕に気づいた夜澄が、不服そうな顔をする。薄まってはいるものの、幾度も同じ場所を吸われているからだろう、花びらのような形で痕跡が残っている。

「まさか未晩とも、したのか?」

「……最後まではまだ」

「しなくていい……だから敏感だったんだな」

 馬鹿正直に応える朱華に、ぶすっとした表情を浮かべながら夜澄は直に彼女の胸の膨らみを愛撫する。

「……あぁっ」

「これからは俺が、俺だけがお前を愛してやる。だから、他の男のことなんか考えなくていい」

「ひゃん……!」

 どこか焦りを見せる夜澄に、朱華は苦笑を浮かべる。未晩は朱華が怖い夢を見ないようにおまじな

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